


- 瀬木
- この作品のご感想はいかがですか ?
- 丹波
- 子供に寄らず、大人に寄らず、今一番求められているのは自然なんですね。代償も求めない。自然の代表として横綱格なのが父親と母親の愛情、愛ですね、何の保証も無い素直な愛。日本は戦後急速にのし上がって来たんですが、あまり早く来すぎたのかな、慌てん坊が政治家になっちゃったのかなという気がします。いずれにしてもあなたが作り始めたこの作品を観ていて納得が行き過ぎるほど。だからこの作品が興行的にうまくいかないと何か ( この社会が ) 情けないという感じがします。
この作品は一途で、今の時勢だからこそ観て欲しい。
- 瀬木
- 最近も社会的には少年犯罪などの問題が目立ちます。
- 丹波
- 今は変な時代です。
- 瀬木
- 非常に閉塞感のある状況の中で、「千年火」の一つのテーマとして他者のまなざしというものがあるんです。子供が取り巻く地域のまなざしとか。学校関係者の方たちにこの作品が受け入れられているのは、そういったテーマがあるからだと思います。
- 丹波
- この作品は観ていていちいちうなずくところがあるんです。 ( 舞台となる ) 海岸は我々にとって懐かしい。この作品は懐かしさの連続で引きずり込まれます。
- 瀬木
- 女性の影が薄い作品でしょう。敢えて父親と子供というものを意識的に描いたのですが、現代の父性というものがだんだん失われてきた時代にあって、男親と子供の関係を強く描きたかったんです。
「監督ご自身の父と子の関係が物語に大きく反映されているのでしょうか ?」
- 瀬木
- そういうことはないのですが、この作品に関わらず、僕が今まで撮ってきた映画というのは実は同じような題材が多いんです。自分で意識したわけではないけれども、近年撮った 3 作品は父親または母親がいない子供が主人公です。僕には小さい子供がいますが、子供は生まれると同時に別れに向かって歩き出している。
出会いと別れは表裏一体でそれがぐるぐる回っている。そういう考えが僕の中でずっと根付いているんです。
地元・福岡新宮町の方々もたくさん出演されてますね。
- 瀬木
- 1000 名近い人に出ていただきました。一般の方と俳優の方がどう融合できるか悩んでいたんですけれど、うまくいったところとそうでないところがありました。僕の中でそういう表現方法が手になじんでないんですね。今後もっと試行錯誤していくしかないと思っています。
テクノロジーが発達していく世の中にあって、自然や祭りなど失われていきそうなものがこの世の中にたくさん詰まっています。
日本の自然にはこの世からあの世へ行く入り口がどこにでもあるような気がするんです。そういったところに自然の豊かさがあるのかなと。自然の豊かさの象徴として、現実と幻想のインターフェイスを描いたシーンが所々にあります。
僕が今まで撮ってきた作品もそうなんですけれど、映画というものはそこに映っていないものの力をどこまで感じさせるか、というところがテーマだと思います。特に自然は、たとえ切り取ったとしてもそれ以外の空気なり音なりいろいろなものが感じれます。必ずしも目に見えているものだけではなく、目に見えないものの力を生かすということをこれからもテーマとしてやっていきたいなと思います。
丹波さんご自身の企画で今後映画製作は考えていらっしゃいますか ?
- 丹波
- 映画は作っている過程においても楽しくなければならない。僕はプロデューサーとしての能力 0 、監督としての能力はアクションなら出来ますけど・・・、スタッフを集めてわずかな誓いをさせる、それが唯一の力かな。瀬木監督の人柄も含めて今回いろいろ分かりましたから、一緒に作っていければいいね。
- 瀬木
- 光栄です。是非、現場でご一緒したいです。この映画は人間の、親子の、周りの人たちの愛、そして幻想的なきれいな風景が描かれています。皆さんにも是非、目に見えない素敵な世界を感じていただきたいです。
- 丹波哲郎
- 昭和 27 年「殺人容疑者」 ( 新東宝 ) にて主役デビュー。以後出演した映画は海外作品も含めて 500 本にも及ぶ。映画監督、心霊研究家としても活躍。2006年9月24日肺炎のため死去。享年85歳。

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