「好きじゃないのに、嫌いになれない、このまちも、人も」
瀬木直貴の故郷である三重県四日市市を舞台に撮影された本作は、元々、故郷に対して決別のつもりで作り始めた瀬木のプライベートフィルムであった。
主人公は、石油化学コンビナートが立ち並ぶまちに住む16歳の少女・アオイ。
海外のメールフレンドに「青い海に面した美しい街に住んでいる」と嘘をついたことが発端となり、静かなまちに波紋が起きていく。
“ここではないどこかに逃げ出したい衝動にとらわれている”アオイの内面は、瀬木自身の故郷への心情でもあった。
ところが、映画製作が始まると多くの市民がボランティアやエキストラで参加した。
「僕は故郷を見切ったはずだったが、故郷は自分を見捨ててはいなかった」
映画の撮影を通して、故郷に対する思いが変わり、その変遷がそのまま映画に反映されていった。
この作品が契機となって、東京で活躍している三重県出身者でつくる有志の会「四の会」が発足。
映画作りから始まった縁は広がっていき、音楽家・作家・漫画家といったアーティストのみならず、起業家・公務員・会社員・大学生やフリーターまで、多くの人々が故郷の魅力を発信するに至っている。
ストーリー
おそらく、誰しもが描いているであろう「故郷の街」に対する複雑な思い。
人は、そこを離れた時に初めて「故郷の街」が、自分の人生の一部になっていることに気づく。
舞台は、中京圏の工業都市四日市。
コンビナートにほど近い、海沿いのエリアに住む「アオイ」は、この街も、そして自分自身の境遇も好きになれない女の子。
彼女は外国のメールフレンドに、自分の街が青い海に面した緑豊かなリゾート地のような街だとずっと嘘をついていた。
やがてメールフレンドが来日することになり、これまでついていた「嘘」が、さまざまな波紋を巻き起こす。
さらに、唯一の肉親であり理解者でもある叔父が、婚約者の住む東京へ行ってしまうのではないか、という不安の中で、「アオイ」の気持ちは揺れ動いていく…。
キャスト
西村美紅 高野八誠 早坂好恵 渡辺哲 小宮孝泰 内山信二 他
インフォメーション
2003/カラー35ミリ/ビスタサイズ/85分 ⓒ2003映画「いずれの森か青き海」製作上映委員会