作品情報

果てぬ村のミナ

「神（ミ）菜（ナ）が帰ってくる……60年振りに」
その噂は、限界集落に近い村の高齢者たちの間で、密かに広まった―。

山頂付近の急勾配な斜面に、緑鮮やかな茶畑が広がる天音村上ノ集落。
この地で、お茶の製造を生業としている守屋家の長男・耕助は、自転車で一時間掛けて麓の高校に通う高校二年生。
耕助と同級生の松原聰、鈴木瑠璃は、ロックバンドを組み、放課後、村で唯一の喫茶店レイラのスタジオで練習するのを日課としていた。
お茶の収穫を控えたある日、黒髪の美しい少女・松下神菜が、病に冒された祖母のフミと共に、耕助の上の空き家に越してくる。
フミは、耕助の祖母ハルとは幼馴染で、60年ぶりの帰郷だという。
耕助は、初対面の神菜に、歌がヒドイと笑われるが、次第に謎めいたその美貌に惹かれてゆく。

ストーリー

ある時、耕助は、林の中で、不思議な神菜の姿を目撃する。
木漏れ日差す中を、何者かに話しかけるように舞う神菜。
岩肌に手を触れ、目をつむり天を仰ぐと、気が抜けたように倒れ込んだ。
気を失なった神菜を家に運び入れた耕助に、フミは「この子は、厄介なものを背負って生まれてきたんだよ」と謎めいたことを言うのだった……。